太陽光発電設備の名義変更

資産における名義変更の重要性

太陽光発電設備は、売電収入・税制優遇・再エネ推進に寄与する重要な資産です。
事業譲渡や住宅売却などに伴い、名義変更手続きが必要になります。
名義変更手続きを怠ると、法的な所有権が不明確になり、後々の売却・処分・保険・税務上で支障が生じ、せっかくの資産を無駄にしてしまうことになりかねません。

[名義変更をしない場合のリスク]

  • 電力会社へ売電できない
    太陽光発電設備による電力は所有者でなければ売電することができません。売電を行わない場合でも、電力会社との契約等で問題が発生することがあります。
  • 保証が受けられない場合がある
    名義変更をしないと、不具合が発生した場合にメーカー保証が適用されず、修理費用が自己負担になる可能性があります。

1. 太陽光発電設備の名義変更とは

発電設備の所有者(個人・法人)変更に伴う、各種登録や契約の名義修正

    [対象となる主な変更]
  • 登記や設備認定(経産省)情報・売電契約
  • 電力会社との接続契約
  • 保険・メンテナンス契約

2. 名義変更が必要となる主なケース

  • 相続・贈与による所有者の変更
  • 発電設備の売買・譲渡
  • 法人の合併・事業譲渡
  • 個人事業から法人化等

3. 名義変更はなぜ必要か?

    [法的義務]
  • FIT制度※1のルールでは、名義変更は義務経済産業省の設備認定に紐づく所有者が変われば必ず変更手続きが必要
    [売電収入の受取・契約トラブル防止]
  • 契約者と口座名義が異なると入金が停止される可能性がある
  • 所有権の証明ができず、保険金や補償が受け取れないケースがある
    [トラブル予防とリスク管理]
  • 譲渡後にトラブル発生(例:売電停止、電力会社との契約無効)
  • 第三者による差し押さえリスク(例:所有者と契約者が異なる場合)

※1 再生可能エネルギーで発電した電気を一定の固定価格で買い取る制度

4. 名義変更の流れ(一例)

名義変更の流れ名義変更の流れ
CHECK POINT

【売買契約・譲渡契約の締結または相続発生】

※相続以外の名義変更の場合、事前に説明会開催や関係窓口との確認作業などを行う場合もあり

  • 経済産業省への名義変更申請(再エネ電子申請)
  • 電力会社(送配電事業者)への契約者変更申請
  • 税務署・自治体への資産変更通知(必要に応じ)

5. 相続と名義変更

相続に伴う名義変更の場合、太陽光発電設備を【誰が相続するのか?】がはっきりと明記されている書類が必要となります。

    [遺産分割協議書・遺言書での留意点]
  • 太陽光発電設備は土地や建物とは別の財産として取り扱われます。
  • 土地や家屋を相続しても、太陽光発電設備は自動的に相続されません
    ※太陽光発電設備としてはっきり明記していない場合はその他の財産として取り扱われます。

(一例)「相続人Aが建物を相続、相続人Bがその他すべての財産を相続する。」とした記載がされていた場合

建物

相続人Aが相続

太陽光発電設備含むその他の財産

相続人Bが相続
CHECK POINT

遺言書や遺産分割協議書を作成する際には、【太陽光発電設備はだれが相続するのか】はっきりと記載しましょう。
記載のない場合、相続人全員からの同意書等が必要となり、相続人の中に認知症の方などがいた場合、手続きが複雑になります。

6. 用語説明

[FIT制度]
IT制度は、英語で「Feed-in Tariff」(フィードインタリフ)と言い、「固定価格買取制度」という意味になります。再エネの普及を促進するため、太陽光設備によって蓄えられた電力を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する2012年7月より施行された制度です。
期間は太陽光発電設備のkW数によって変動します。(認定日より[10kW未満:10年、10kW以上:20年])
※現在はFIP制度に変わり価格が変動するようになっています(2022年~)

[卒FIT]
FIT制度が定める期間を過ぎた状態のこと。

[非FIT] ※Non-FITとも呼ばれます
FIT制度を利用せず、個人で電力会社に売電したり自家消費すること。
法人が太陽光事業を行う場合によく見られます。

7. 主な申請内容

  1. 経済産業省への申請
    1. 固定買取期間中(FIT中)の名義変更 (10kW未満)
    2. 固定買取期間終了後(卒FIT)の名義変更 (10kW未満)
    3. 固定買取期間中(FIT中)の名義変更 (10kW以上50kW未満)
    4. 固定買取期間終了後(卒FIT)の名義変更 (10kW以上50kW未満)
    5. 事業実施体系図および関係法令手続状況報告書の作成※約20種の関係法令への該当状況を役所に確認及び報告
    6. 相続証明書の作成
    7. 基礎情報の届出 ※小規模事業用電気工作物のみ
    8. 使用前自己確認実施義務の届出 ※小規模事業用電気工作物のみ
  1. 電力会社への申請
  2. 戸籍等の収集(追加取得分)
  3. 不動産名義変更
  4. 設備ID、事業者ID・PWの照会
  5. 保険・補助金名義変更(1窓口)
  6. なお、10kW以上50kW未満の場合は個別相談となります。また、50kW以上の太陽光設備は現在対応致しかねます。

8. 小規模事業用電気工作物に該当する設備について

小規模事業用電気工作物とは、2023年3月20日に改正された電気事業法によって新たに設けられた電気工作物の区分で、事業用電気工作物の一部として扱われます。
出力10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備も該当します。
また、出力20kW未満の風力発電設備も該当します。

これらの設備は、低圧で受電していることが条件となります。
高圧で受電している自家用電気工作物に含まれる上記の出力の発電設備は、小規模事業用電気工作物とはなりません。

小規模事業用電気工作物の設置者には、以下の義務が課せられます

  1. 基礎情報の届出: 使用開始前に経済産業省に届け出る必要があります。
    ※主に会社情報・設備情報(図面等の必要)・保安体制などを報告
  2. 使用前自己確認実施義務: 使用開始前に自己確認を行い、基準に適合していることを確認し、その結果を経済産業省へ届け出る必要があります。
  3. 技術基準適合維持義務: 一定の技術基準に適合するように維持しなければなりません。
  4. 報告義務: 経済産業大臣から業務内容等の提出を求められた場合、報告しなければなりません。

なお、2023年3月20日以前からの既設設備でFIT中の場合は、①②の報告は手続き負担の軽減のため、施行時の届出は不要となっています。
ただし、以下の既設の設備はFIT認定の有無にかかわらず届出が必要となります。

  • 基礎情報の項目に変更があった場合(譲渡や売買も対象)
  • 小規模事業用電気工作物に該当しなくなった場合(廃止を含む)

経済産業大臣は、技術基準に適合していない小規模事業用電気工作物に対して、修理や使用の一時停止などを命じることができます。
詳しくはこちらから→「小規模発電設備等保安力向上総合支援事業」(画像出展元)

CHECK POINT

既設設備であってもFIT中でない場合は、
「基礎情報届出制度」の施行日から6ヶ月以内(2023年9月19日まで)に基礎情報の届出が必要です。
届出には[郵送][持参][オンライン申請]の方法があり、オンライン申請の場合【GビズID】が必要となります。

まだ届出をされていない場合やGビズIDの取得についても当事務所で対応可能です。

出展:デジタル庁

名義変更は、再エネ事業の「信用」と「収益」の基盤です!
放置=重大リスク」につながる可能性があります。